てくてく散歩

昼、彼を駅で見送ったあと、少し昼寝をして
むだに過ぎていくのも悲しいので、うろうろ散歩をしました。
 
なんとなーく
昔、通った通学路をゆき、変わったものや変わらないものに
思いを馳せていました。
 
買い食いをして怒られたたばこ屋さんがまだあってほっとしたり
踏切のペンキを塗り直したとき、生乾きのペンキで指紋の模様をつけて
それが残っているかと思ったけど
ペンキは再び塗り直しの時期にきているようで さびてボロボロ。
私のちいさな指紋は見えなくなっていました。
 
マエブンと呼んでいた、小学校近くの文房具屋さんはなくなって
豪邸になっていました。
 
私の通っていた小学校・中学校は隣接しているので、どちらも外から眺めました。
 
思えば、こうして通学路をわざわざ歩いてみたのは、本当に久しぶりのことです。
通っていた当時以来かもしれない。
 
同級生に会ってしまうのが怖くて、うろつけなかったんですね。
 
小学校はただ懐かしかったけれど、中学校は、苦い思い出が甦る。
もう苦いまんまではなく、たしかに苦しんでいた当時の自分へのいとおしさと懐古にくるまれた上の
苦さだけど。
 
歩道に生える銀のポールに、曲線状の自分をうつしながら
体育館やプールから聞こえる元気な声を背中に背負うようにして
早退や、別室登校をしていました。
 
あのころはたくさん引っ越しをしました。
中学校の脇を通って、次に暮らした家へ足を延ばしました。
 
たどりつくとさらに苦しくなりました。
母と二人暮らし、揉めに揉めたアパート暮らしでした。
うっかり涙が出そうになりながら、こらえて、せっかくだからと
近くのショッピングセンターまで行くことにしました。
 
ショッピングセンターの目の前には、またもや、昔暮らしたアパート。
父と住んだ家でした。
父からの決別を受けた駐車場は少し改装されていました。
私たちの住んだ部屋は、空室のようでした。
 
ようやく、ショッピングセンターにつきました。
 
1時間ほど、歩きまくった、長い散歩でした。
あの道筋に、私の人生の断片はいまだに濃く残っていました。
 
あの時代を生きたから、いまの私がいるっていうのに
まったく別人みたいに、生きている。
2個目の人生をしれっと他人のふりして生きているみたい。
 
つながなきゃいけないね。
 
いい、一日でした。