自分の道を突き進んでいる人

知人が遠方から訪ねてきたので、一緒に飲んだ。

知人と、3軒目のバーで出会った人たちと4軒目に行ったら、お店をやっている知り合いAさんが通りかかり、みんなで飲むことになった。

 

3軒目のバーで、ゲスな話で知人が私をからかい、その話を真に受けた人が何度も下品な話を振ってきて、めんどくせえな。と思っていた時に、Aさんが通りかかったのだった。

 

Aさんとは、少し不思議な出会いをしていた。

 

私が旅行先でAさんの友人と出会い、そこで「ぼく山梨に行きたいんですよ。知人が山梨で料理をしてるんです。」と言われて、Aさんのことを知ったのだ。

 

しかも、旅先で知り合った人が本当に山梨に来ることになり、一緒に、夫も交えてAさんのお店に食べに行ったりした。

 

そして、知り合ったのちに、Aさんとは別のバーで一緒になり、喋ったことがあったと思い出した。

 

そんなAさんと突然路上で出会った。

このような形でプライベートで飲むのは、きちんと知り合ってからは初めてだった。

 

何を話したというわけではないし、こちらから話を振らなければ自分からペラペラ話すような人ではない。

 

だけど、色々と聞いた末に語ってくれた料理についての考え方は、とても新鮮で、まっすぐだなと思った。

 

同席していたゲスな男とは全く反対の、紳士的な振る舞いに、なんだかいたく感動してしまった。

 

旅先で出会ったAさんの知人も料理人だったのだが、私の舌でも「これは本物だ」と感じさせる味だった。

 

実際その人は、あと数ヶ月で店を辞め、一つ星の店で働くそうだ。

 

真っ直ぐな人というのは優秀な投手が投げたボールのように、真っ直ぐに進んで成果を出していく。おしゃべりだろうが、黙っていようが。

 

汚い飲み会の中で、きれいに咲いた花を見たような気持ちで、思わず居住まいをただした。

 

とくに料理人というのは、彼も言っていたけど「結果が秒でわかる」仕事だ。ギリギリの世界で、一皿一皿が、勝負。

 

そんな世界で毎日闘っている人、それも生半可ではなく、文化を変えてやろうという気持ちでやっている人は、本当に心の支えになる。

 

そういえば社長にも料理人の友人がいるけれど、彼女をいたく尊敬しているようだ。

私も多分同じような気持ちで、Aさんやその友人を尊敬している。

 

あそこまでストイックに、自分のやりたいことを体現している人たちは本当にすごい。

 

そうして思い返せば、多分夫のことを好きなのも根底に同じ気持ちがあるのだろうと思う。

 

夫の作るワインが認められてほしいし、必ずそうなると心の底で信じている。

 

夫って結構すごいのかも、と思わせてくれる瞬間はそう多く訪れないけど、これまで積んできたキャリアや、夫の修行先の人が「彼ほどの知識を持ってる人はなかなかいないよ。」と言ってくれたことなど、「あぁやっぱりそうなのかな」とたまに裏付けが取れることはある。

 

別に夫に尽くしている気なんかないけど、伴侶として、夫には成功してほしいし、幸福になりたい。

 

とにかく真っ直ぐに自分の道を進んでいる人はカッコいい。

 

自分はどうだ?きちんと生きてるか?と問われている気分になる。迷ってばかりだし怠惰だけど、こういう人たちと接点があるだけで、あぁ頑張らなくちゃと思わされる。

 

自分もカッコよく生きたいなぁ。

Aさんは外から来た人だけど、間違いなくこの街でトップクラスに入る料理人だろう。

 

時々自分の生き方を確認する気持ちで、Aさんの料理を食べに行きたいなぁー。