それでも、愛してる

「それでも、愛してる」という映画をみた。
父であり大企業のCEOでもある男が、うつになる。2年を経て、企業の経営はずたずた、ついに家族の元からも去ることにする。

家族と離れたその日、男はゴミ捨て場でビーバーのパペットを見つける。
その日から男はビーバーを肌身離さず持ち、自分の言葉を、パペットを通して語るようになる。
うつなど吹き飛び、会社は再び軌道に乗った。

が、なんやかんやあり、男はビーバーに支配されていると強く感じるようになり、とんでもない行動に出る。


とても良い映画だった。
わたしは分身に心理を投影する描写のある映画が好き。この映画には死と再生が描かれていたが、そのプロセスが明確であるのが良かった。

パペットを操るオヤジなんてどう見たってコメディだけど、違うんだ。
うつになる前の彼は描かれなかったけど、だからこそ、きっとそんなことをする人間じゃなかったんだろうに、と、彼の行動は哀しく映る。

人間の一瞬一瞬の姿は、すべてなるべくしてそうなった、原因に対する結果だ。
2年黙り続けて、パペットの姿を借りて語り始めるしかなかった、彼。

そうしてなら明るくいられた、そうしてでも生きようとした彼がいとおしい。
彼をとりまく家族たちも。

自らを投影した依り代は、いつか必要がなくなる。この映画の「死」にあたるシーンはなかなかハードだったけど…。

彼が「再生」して得たのは、妻が懇願した昔の自分の復活ではない。あらゆる物を失ったけれど生きている、ありのままの自分だ。「失ったものは戻らない」、その通り。
でも家族は、彼の元を去らなかった。

良かったね…( ; ; )

また、時間が経ったらもう一度観たい映画だなぁ。