踊りたいだけなのに

土曜日、遠方から遊びに来てくれていた友人とクラブへ。

ノリのいい人が多く、楽しくなりそうだと思っていた。

土曜日ということもあり凄まじい人出。夜も更けてフロアは盛り上がり、好きな曲が流れる度テンションも上がりまくり。超踊ってた。

けど、冗談めかして胸を触ってくる男がいた。何度手を振り払ってもやめず、本当にしつこくてそいつらの付近から離れた。

その後流れで友人とともにお立ち台に上げられ、そこで大好きな曲が流れたので、帳消しにできそうだと思った。

けどまた別の男に、今度は後ろから抱きつかれ、最低の気分。

振り払って逃げたけど、もう踊れるテンションじゃなくなってた…。


胸を触られたことも最低に嫌だけど、私が本気で振り払って逃げた時、「あーあ、怒ってる(笑)」と、仲間同士で笑いあってるあの狡さが憎いと思った。

「クラブという場所だから」とか「露出度の高い服装だから」というのは全く痴漢をしていい理由にはならない。
私は楽しく踊っていただけで、ただ「一緒に踊る」以上のスキンシップを求める素振りを、微塵も見せたつもりはない。

ナンパはまだ正々堂々と声を掛けている。けどいきなり胸を触る、抱きつくなんて明らかに人権侵害だ。

私は生まれてこの方幸いにも性犯罪被害に遭ったことがなく、露骨にそういった行為をされたのは今回が初めてだった。

痴漢が頻発する電車の中等とはまた状況が違うけど、痴漢行為に附随して起きる、様々な現象やよく耳にする心の機微というのが身を以てどういったものか、想像できた気がする。

これを言葉にするのは本当に難しい。
多くの男性が一生味わうことがないであろう感覚だから。

自分の中の尊重されるべきものがその場で踏みにじられる。相手はその重さを本当のところで理解していないからこそ、それを実行できる。
かれらは殺人を犯さないと思う。
だけど痴漢行為ははたらく。

自分には一生縁のない痛みを相手に与える。彼らの脳内で「胸を触る」「抱きつく」と「人権侵害」はきっとイコールで結びつかないだろう。

された私は、「熱気とともに会場と一体になっていた自分」を切り取られ、闇の底に捨てられた気持ちになった。
一体となって楽しんでいたはずなのに、自分だけがそこから暴力によって追い出された気分だった。

自分を力ずくで奪われていく感覚

これがわからないんだから、本当に、どうしようもないよな。

人間性に加えて想像力も欠如した奴らが、毎日どこかで誰かに、本当に残念で、惨めで、悲しく、すべての気力を失わせるような思いをさせている。

それが今の日本だ。
私の尊敬する人が「痴漢を自然災害か何かのように言うな」と言ってたがまさにそうで。

男の性欲は抑えきれなくても仕方ないものだという考えが根付いているのではないか?
性欲の昂りが凄まじいものであったとしても、人の人権を侵害するなんてあってはならない。

本当に残念で惨めで、気力を失ったよ。

彼の元に駆け込んで明け方までわあわあ泣いた。

明日からの出張、まだ元気が出ない。