貧困な愛の測り方

今まで、愛情をお金や束縛やセックスの頻度で測ってきた。

その価値観は完全に成長期に身につけてきたものだと思う。

彼と過ごしていて、セックスの頻度が少ないことや、彼が忙しすぎて、会いたいと連絡するのもためらってしまうことに疲れて、話し合う機会を作ってもらった。

彼は本当に楽天的で、穏やかで、わたしのことに束縛も執着もしないのに、大事で大好きだと言う。

私にはそれが全然響かないし、理解できないし、安心できない。

これまで試し行動や時間の割き方、お金のかけ方で愛情をはかってきた。

それが全て無い状態で(意図的に自分もしない状態で)好きだと言われても、縋るものがない。


話し合っても、悲しくなるだけだった。
彼は私がいてもいなくてもたぶん幸せでいると思う。
でも、くだらない測り方をするなら、私が申し出てすぐに時間を割いてくれて、誕生日にはお金をかけてくれた。

来月には一緒に住む家を探すことになった。

彼が付き合いのある人たちも私を歓迎してくれて、忘年会を私の予定のない日にしてくれた。

もうここからは、私の問題。
貧困な価値観で構築された私の問題。

誰もが、彼のことをできた人だねと言う。私もそう思う。よく働いて、家事すべてをこなして、礼儀正しくて、誰にでも優しくて、いつも笑ってて。

友達に紹介しても、社長に会わせても、付き合ってることを知らないシェアハウスの住人すら、みんないい人だねと言う。

彼はかしこい人だ。でも普段彼の頭の中にはほんわかしたものしか入ってなくて、一番幸せな時は寝る寸前にどんな夢が見たいか想像する時だと言ってた。

そんなアニメのキャラクターか何かみたいな人が実在するんだなと衝撃的だった。

同時に、いつも悩んで、苦しんでる自分が情けなく思えた。でも、いつも色んなことを考えてる自分には、考えてるからこそ見える世界があるし、だからこそ価値も魅力も生まれていると納得してた。

でもその世界が全然見えない彼には、私はただ考えすぎてる人だ。

彼のことがわからないように、彼も私のことがわからないと思う。

すべてをブチ抜いて、気楽にいこうよみたいに言われると、自分が瓦解して、トラウマだけが残るみたいな状態になった。

いつもいつも、壁にあたると自分の価値観が邪魔をしてる。

こんなにお気楽でハッピーな彼氏いないのにね。

9時から取材なのに、こんな時間まで起きてていいわけがない。

私の心の中にはいつでも暗くて空虚な場所があって、彼みたいな人は一瞬で逃げたくなると思う。
その暗い場所は昔からずっとあって、たぶん死ぬまで光が当たらないままだと思う。

私はずいぶん、周りの人に助けられて、仕事も始めて、友達もたくさんできた。楽しかったり、幸せだと感じたり、自分のことを好きだと思えるようになった。でも、心に空虚な場所があることを時々色んな形で見せつけられると、死んでしまいたくなる。

そこには、束縛とか執着とかお金のかけ方や時間の割き方で愛情をはかったり、言葉を深読みしたり誰かを支配したり傷つけたりする考え方が全部詰まってるからだ。

私はずいぶん普通みたいに生きられるようになったけど、心のベースになる部分にはそんな気持ちが詰まってて、それは彼みたいな人には到底理解されないような可哀想な価値観だ。

太陽みたいな彼が何かするたびに、その部分があることを知らしめられる気がする。

彼のことを好きかわからない。
束縛されたら、執着されたら、乱暴なセックスをされたら、すぐに愛されてるってわかるのに。愛ではないんだけどそれは。知っているんだけど。

貧困なはかりかたしかできないことが悲しい。もっとライトに受け流せたらいいのに。

でも今日、何かが瓦解してしまったと思う。

やっぱり自分はおかしいって。頑張ってここまで生きてきたのに。
何がしたいかも、どうなりたかったかも、わからなくなった。
友達にたくさんパニクったLINEを送ってしまった。

この感情はヘイトに近いかもしれない。私はたかが幼少期の親の育て方一つで死ぬ思いをしながら生きる羽目になって、やっと自分を好きになれたのに、ちょっとしたことで軸がぶれて。
彼は飲食業界でめちゃくちゃに叩き上げられて、それでも頑張って夢を見つけて、そこに向かって生きてて。

絶対お前に、機能不全家庭の苦しみなんかわからねえだろと。
どれだけ私が必死で生きてるかわからないだろ。って。

わからなくていいんだけど。

もう疲れた。
虚しくなった。